営業活動をしていると「ソリューション営業」という言葉をよく聞きます。漠然と理解しているだけで詳しい内容を理解できていない方もいるでしょう。
ここでは、ソリューション営業の基本概念や他の営業スタイルとの違い、その必要性や具体的な手法について詳しく解説します。
目次
ソリューション営業とは
「ソリューション営業」とは、顧客の抱える現状の課題や隠れた問題点を、顧客との対話と通して把握・理解をし、その解決策を提案する営業方法です。
単に製品やサービスを売るだけでなく、顧客の現状やビジネスに深く入り込み、ニーズを正確に捉えた上で、最適なソリューションを提供することを目指します。このアプローチにより、顧客に寄り添った価値を提供し、信頼関係を築くことが重要とされています。
ソリューション営業は古い?「終わった」と言われる理由
ソリューション営業が「終わった」と言われる背景には、**インターネットの普及によって顧客自身の情報収集能力と問題解決能力が向上していることがあります。**顧客は自分で課題を見つけ解決する能力を持つようになり、明確な課題の解決を提供するソリューション営業の必要性が低下しているためです。
その代わりに注目されているのが「インサイト営業」です。
インサイト営業は、顧客自身が気付いていない潜在的な課題を見つけ、その解決策を提供する営業スタイルです。
しかし、顧客が気付かない課題を提案するには、深い準備が必要で、時間がかかることがあります。
そのため、営業担当者は5W1HやSPINなどのフレームワークを活用して顧客の状況を深掘りし、潜在的な課題を明らかにしていくことが求められます。
プロダクト営業・インサイト営業との違い
「ソリューション営業」のことを調べると「プロダクト営業」と「インサイト営業」というものが一緒に紹介されることがあります。
「ソリューション営業」と「プロダクト営業」「インサイト営業」は、それぞれ異なるアプローチと目的を持った営業スタイルです。これらの違いを理解することは、効果的な営業戦略を構築するために重要です。ここでは、具体的なアプローチやフォーカスの違いをご紹介します。
ソリューション営業 | プロダクト営業 | インサイト営業 | |
---|---|---|---|
営業目的 | 明確になっている課題を解決 | 商品やサービスをアピール | 潜在的な課題の解決 |
アプローチ | 課題をヒアリングし、最適な提案を行う | 製品やサービスの長所をアピール | 課題を掘り起こし、最適な提案を行う |
ターゲット | 明確な課題を抱えている方 | 手に入れたい商品やサービスが決まっている方 | 潜在的な課題を抱える顧客 |
ソリューション営業:顧客の明確になっている問題に対する解決策を提供するための営業
プロダクト営業:商品・サービスの特徴やポイントをアピールしていく営業
インサイト営業:顧客の潜在的な課題の解決策の提供するための営業
「プロダクト営業」はすでにニーズを感じている方、「インサイト営業」はまだ課題を見出せていない方への営業アプローチで、ソリューション営業は、「今、抱えている問題を解決したい」という方へ、一番良い解決策を提示する営業方法といえます。
「きつい」と言われている理由
よく営業をしていると「ソリューション営業はきつい」という話をよく聞きます。
なぜ「きつい」と言われるのでしょうか。
「きつい」理由
- 顧客ごとの解決策が必要なため正解が複数になってしまう
- 顧客のビジネスや業界に対する深い理解や事前調査や分析、業界知識など幅広い知識が必要
- 複雑な課題に対する創造的な解決策の提案が求められる
- 商品の営業活動だけでなく課題解決のためのコンサルタントとしての業務も兼務
このように、ソリューション営業では、営業担当者には高いスキルと経験が求められることから、「きつい」と感じる人が多いとされています。
ですが、「きつい」面がある一方、
- 顧客の業績向上や課題解決に直接関わることができ、その成長を実感できる
- 複雑な課題に対して解決策を提案し解決することでやりがいを感じられる
- 長期的な関係構築を通じて、顧客から信頼してもらえる
という、顧客のビジネス成功に直結する重要な役割を果たすことができるため、やりがいのある職務として多くの営業担当者に選ばれています。
ソリューション営業が必要な理由
なぜ今なおソリューション営業が必要とされているのか、その背景と理由について詳しく説明いたします。
- インターネット社会による情報の増大
- ライフスタイル・業務スタイルの短期化
- 商品のコモディティ化
- 顧客課題の多様化
インターネット社会による情報の増大
かつては、限られた商品・サービスとアウトバウンド営業が主流でした。
インターネットが普及し始めた頃、顧客は自らの課題やニーズに合った商品・サービスを簡単に見つけられるようになりました。
しかし現代では、インターネットやSNSなどの情報発信手段が多様化し、膨大な情報があふれています。その結果、顧客は適切な商品・サービスを選ぶことが難しくなっています。
そこでソリューション営業が必要となります。
顧客の問題に対して適切な情報を提供し、解決策を示すことで価値を提供します。これにより、顧客は膨大な情報の中から最適な選択をする手助けを得られ、効果的に課題を解決することが可能になります。
ライフスタイル・業務スタイルの短期化
情報の増大とともに、顧客のライフスタイルや業務スタイルは急速に変化し、モノの消費サイクルも短くなっています。
この変化の中で、顧客が長く使える価値を提供することが求められています。そのため、ソリューション営業は特に重要です。
ソリューション営業は、顧客の最新の状況や変化するニーズに合わせたピンポイントでの提案を行うことで、迅速にニーズに応えることができます。
このアプローチにより、顧客にとって真に価値のある解決策を提供し、長期的な信頼を築くことが可能になります。
商品のコモディティ化
情報の増大と顧客のライフスタイルの短期化により、多くの商品やサービスが市場に出回り、目に留まる機会が増えました。これにより、**製品やサービスの差別化が難しくなり、価格や基本的な機能以外での競争が生じることとなりました。この現象を「コモディティ化」**と呼びます。
コモディティ化が進む市場では、単なる価格競争ではなく、顧客に対する独自の価値の提供が重要です。企業は差別化を図るために様々な商品を開発し、商品の種類が増える一方で、強みを明確に伝える必要があります。
その点、ソリューション営業は、商品そのものではなく、顧客の課題解決に焦点を当てることで差別化を図ります。顧客のニーズや問題を深く理解し、それに応じた具体的な解決策を提案することで、他の競合と差別化し、顧客に対してより高い価値を提供することが可能です。
顧客課題の多様化
商品やサービスの種類が増えると同時に、顧客の課題も複雑化・多様化。単に商品やサービスを売るだけでは、これらの多様な課題には対応しきれなくなっています。
顧客が購入後にどのように課題を改善するかまで一緒に提案しないと、多くの類似商品との違いを示すことが難しくなります。
そこで、ソリューション営業の役割が重要です。ソリューション営業は、顧客の具体的なニーズに応じたプラスの付加価値を提供し、単なる販売にとどまらず、課題解決に向けた実質的な提案を行います。これにより、顧客に対してより深いサポートを提供し、多くの課題に対応することで、他の競合商品との差別化を実現します。
ソリューション営業の手法・手順
顧客の悩みを改善するためのサービスを提案するための営業であるソリューション営業を効率的に進めるには、次の手順が必要です。
ここでは、ソリューション営業を効果的に実施するための基本的な手法と手順について詳しくご説明します。
①顧客・市場分析
②顧客との関係構築
③ヒアリングによる課題調査
④商談によるソリューション提案
①顧客・市場分析
最初は自社の持つ強みをどう活かすことができるかを知るために、顧客の分析から始めましょう。
自社の強みを活かして解決できであろう課題を、顧客・市場分析から見つけます。
顧客の課題
- 税金などの計算が毎月大変
- 採用広告を出しても人材が集まらない
- 業務の改善をしたいけど、自社にあったシステムがない
市場で対応できている範囲
- 税金の計算ができるソフトウェア
- フリーペーパーやWebでの広告媒体
- Excelやスプレットシートなどでの関数
顧客の課題を確認できたら、次は自社の持つコア・コンピタンス(他社には真似できない独自の強み)を見つけましょう。
自社のコア・コンピタンスを見つけることができれば、新しいサービスの発見につながります。
自社のコア・コンピタンス
- 従来あった経理システムとの連携ができるためのシステム構築能力
- SFAなどの業務管理ツール作成のシステム構築能力
- 人材紹介会社として別の会社とのつながりがある
- 通常自社でやると思われていた業務を担う(BPO)
②顧客との関係構築
顧客との信頼関係を築くためには、継続的なコミュニケーションが不可欠です。信頼がなければ、顧客は抱える問題を話してくれません。
信頼を得るには、顧客の業界に対する深い知識を持ち、顧客の課題を理解するためのヒアリングが重要です。こうした取り組みによって、顧客に信頼されるパートナーとなり、より深い関係を構築することができます。
③ヒアリングによる課題調査
顧客との関係を構築した後は、現状のヒアリングが重要です。
まず、顧客がどのような問題に直面しているのか、業務でどんな不都合があるのかを把握します。現時点で悩みがないと感じている顧客でも、ヒアリングを通じて「実はここに困っていた」と気付いてもらうことが提案の準備につながります。
課題調査の際には、「SPIN話法」が有効です。
Situation(状況質問)で現状を確認し、
Problem(問題質問)で具体的な問題を掘り下げ、
Implication(示唆質問)で問題の影響を示し、
Need-Payoff(解決質問)で解決策の価値を強調します。
このフレームワークを活用して、商談へとつなげていきましょう。
ヒアリングについては下記記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
④商談によるソリューション提案
ヒアリングで顧客のニーズや課題を確認した後は、解決策を提案しましょう。
商品の説明にとどまらず、顧客の業界に類似する導入事例や成功事例を紹介することで、提案の信頼性が高まります。
また、自社の商品やサービスがどこまでカバーできるのかを明確に示し、顧客の質問や懸念に丁寧に対応することで、安心感を与えられます。
商談は売り込みの場ではなく、顧客の問題解決をサポートするパートナーとして信頼を築く機会です。顧客の視点に立った提案を行い、長期的な関係構築を目指しましょう。
提案を進めて行くと必ず、契約を決断してもらう必要があります。
顧客に納得してもらい、契約を快諾してもらえるならば良いですが、慎重になり過ぎてしまう方もいるでしょう。
その時は背中を押してあげるクロージングトークが必要です。
ソリューション営業の事例
ソリューション営業は、業界や企業によってアプローチや提案内容が大きく異なります。
具体的なソリューション営業の事例を紹介し、各事例においてどのような課題があり、それに対してどのような解決策が提供されたのかを詳しく解説します。
クラウド会計システムサービスの事例
給与・経費・勤退など、経理関係に関わる計算が1つのソフトで可能なサービスの提供が可能な企業です。
従来のソフトウェア販売会社では、資料送付、興味があれば商談、購入という流れが一般的で、その後のアフターフォローが不足していました。
しかし、顧客の課題に対するソリューション提案を行うことで、単なる課題解決にとどまらず、クロスセルやアップセルの機会が生まれました。
これにより、給与計算などの関連サービスも一括で導入され、顧客の多様なニーズに対応できるようになりました。
スキマバイトアプリの事例
短時間勤務希望者から募集をかけることができる求人アプリの提供会社。
従来のアルバイト求人では、長期求人や専門性の高い職種、季節限定の募集が中心で、急な欠勤時の対応策も不十分でした。
しかし、顧客の課題に対するソリューション提案を行うことで、長期的な定着促進や繁忙期のみの求人、専門性が低い職種にも対応可能な仕組みが整いました。
当初は短期アルバイトのユーザーメリットが強調され、定着が進まなかったものの、企業側のメリットも広く認識されるようになり、利用が広がりました。
ソリューション営業に向いている商材と具体例
ここではソリューション営業に適した商材と、その具体例について紹介します。ソリューション営業がどのように顧客の価値を引き出し、成果を上げているかを具体的に解説します。
- IT・DX
- 金融
- コンサルティング
- 広告
IT・DX
IT・DXは、企業が直面する課題が多岐にわたるため、カスタマイズされたソリューションが求められます。
具体例
- ERPシステム:在庫管理や生産計画の最適化に悩んでいる製造業
- クラウドサービス:データのバックアップやリモートワークの環境整備
- SFAシステム:営業管理が煩雑になっている営業部
- 会計システム:給与計算に伴う経理周りに整備が必要な経理部
金融
顧客のライフステージや投資目的に応じて幅広い商品が存在し、顧客の個別のニーズに対応することが求められます。
具体例
- 証券:リスク分散のためのポートフォリオ設計に困っている方
- 保険:老後の生活資金の確保に不安を抱えている方
- 投資:リタイア後の資金運用に関心がある方
- NISA:税制優遇を活かした資産形成を考えている方
- 外貨積み立て:為替リスクヘッジを考えている方
コンサルティング
企業が直面する多様な経営課題に対して専門的なアドバイスが求められます。
具体例
- 採用コンサル:人材不足に悩んでいる中小企業
- 経営コンサル:事業拡大の戦略策定を必要とするベンチャー企業
- M&Aコンサル:事業の多角化を図るためのM&Aを検討している企業
- 営業コンサル:営業力に悩みがあるベンチャー企業
広告
ターゲット層に応じた最適なメディア選定が重要であり、顧客のニーズに合わせた提案が求められます。
具体例
- ネット広告:自社のウェブサイトへのアクセスを増やしたいサイト運営企業
- TVCM:ブランド認知度を高めたい新製品
- SNS広告:若年層へのアプローチを強化したいサイト運営会社
- 紙面広告:ローカルな地域住民に訴求したい企業
まとめ
ソリューション営業は、単なる商品やサービスの販売ではなく、顧客の課題解決に焦点を当てた営業スタイルです。
インターネットの普及や顧客ニーズの多様化により、ますます重要性が高まっています。適切な手法とプロセスを踏むことで、顧客との信頼関係を築き、持続的なビジネス成長を実現することが可能です。
弊社ではソリューション営業を用いて顧客企業様の営業を支援させていただいております。ご興味ございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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法人営業代行 営業ターゲットのリストアップから、テレアポ、訪問営業、クロージングに至るまで、新規開拓営業の全てのプロセスを営業代行するサービスです。 |
早稲田大学卒業後、コンサルティングファームを経て、
株式会社Sales and Innovation Japanにジョイン。
大手スキマバイトアプリの営業活動や、ITシステム事業の営業支援に従事。
現在、ウェビナー&コンテンツマーケティング事業「triggerr」の立ち上げに奮闘。