営業戦略の立て方5ステップ。事前準備からフレームワークまで紹介

営業をしていると「目標は立てたのになかなか達成できない」「顧客数増えたけど売り上げが目標に達しない」というお悩みを持つことがあるのではないでしょうか。

この記事ではそもそも営業戦略とは何か、営業戦略の立て方と立てるときに活かせるフレームワークをご紹介します。

営業戦略とは

営業戦略とは、企業が中長期的な営業目標を達成するために設定する全体的な計画や方針を指します。

営業戦略は目標を達成するために限られたリソースを最大限に活用し、競争環境の中で最適な行動を決定するための指針として活用されます。営業目標や経営目標を達成し、企業の利益や成長させるために不可欠です。

主な営業戦略内容

  • 営業方法の選定
  • 商材やサービスのターゲットの設定
  • マーケットの選定
  • 売上目標やターゲット競合との価格を考慮して上での価格設定
  • ブランディング構築

また営業戦略と混同されやすいのが、「営業目標」と「営業戦術」です。

これはそれぞれ役目が違い、それぞれを適切に活用することでビジネスの成功繋がります。

営業目標:企業や営業部門が一定期間内に達成しようとする具体的な販売や収益の目標

目標設定は、具体性、測定可能性、達成可能性、関連性、期限といった要素を考慮して設定することで効果的な目標設定が可能となり、進捗の追跡や成果の評価が容易になります。

主な営業目標内容

  • 売上前年比10%up
  • 新規顧客数1万人達成

営業戦術:営業目標を達成するために具体的に実施するための活動や手法

営業戦略を実行に移すための具体的なステップや活動を含み、日々の営業活動を効果的に進めるための指針となります。

主な営業戦術内容

  • ターゲット市場の選定
  • 営業プロセスの最適化
  • 見込み客の獲得
  • 顧客関係の構築と維持
  • 販売スクリプトの作成
  • クロージング技術

混同されることが多い内容ですが、

営業目標:達成すべき具体的な成果

営業戦略:その成果を達成するための大まかな計画

営業戦術:戦略を実行する具体的な方法や手段

に分けることができます。

営業戦略成功の具体例

営業戦略を立てる前に、営業戦略成功事例を紹介いたします。

不動産マッチングサイト

弊社営業代行事業でご協力させていただいたお客様の事例です。

今までは、物件の売買は不動産会社と顧客の直接のやり取りで行っていたが、どうしても大手不動産会社に顧客が集中してしまい、中小手の不動産会社の顧客獲得ができない状況がありました。

このような不動産業界の問題点を解消するために立ち上げたのが顧客と不動産会社を直接繋げるマッチングサービスでした。

ですが、新しいサービスとして立ち上げをしたが、訪問営業ができる営業担当の数が少ないとのことで、弊社へ依頼をいただきました。

背景• 不動産会社向けの新しいサービスを立ち上げたが訪問営業員が不足しており、強化したい
• 他社営業代行会社で電話営業を行っていたが、生産性に満足していない
• 業界では比較的後発のサービスではあるが、業界ナンバーワンサービスに育てたい
戦略• 営業戦略、ターゲット戦略の策定
• エリアごとの獲得シュミレーションの作成
•トークスクリプトの作成
• テレアポの代行
• 訪問営業代行とクロージング
• 営業結果のレポーティング
• 今後の営業方針に関するアドバイス
結果初めの2ヵ月で300社以上の新規契約を獲得
500社以上の新規契約獲得を実現。
1年後には業界ナンバーワンのサイトへと成長。

全国の不動産会社へアプローチを行うことで、初めの2ヵ月で300社以上の新規契約を獲得し、業界ナンバーワンのサイトへと成長。

コンサル事業のベンチャー企業

これは、コンサル事業を運営するベンチャー企業が、受注率を3倍に上げた営業戦略の概要です。

コンサルティング事業を担うあるベンチャー企業では、新サービスとしてサブスクリプション型のSaaSサービスを提供開始しました。しかし、営業担当のスキル不足が原因で受注率に課題を抱えていました。

背景営業担当者のスキル不足
戦略営業組織の構築
結果商談からの受注率が3倍

そこで、営業組織の構築を実施し、ヒアリング項目や訴求ポイントを可視化。営業プロセスの改善をすることで、半年後に商談からの受注率が3倍に改善されました。

クラウドワークスの事例

企業と個人がオンラインで直接つながり、仕事を受発注できるサービスを提供しています。低単価で小遣い稼ぎ感覚だったオンライン業務代行業でした。

背景低単価のため小遣い稼ぎ感覚
外注できる人材領域が狭い
戦略ユーザー側:オンラインだけでも生計が立てられる案件の提供
企業側:幅広い人材の確保により採用コストを削減できる
結果サービス提供開始3年でユーザー数73万人達成と上場

現在では470万人のフリーランスと、76万社の企業が利用。

フリーランス向けのサポート体制を強化する戦略やスキルアップセミナーの開催、優秀なフリーランサーの表彰制度を導入した結果、ユーザー満足度が向上し、プラットフォームの利用者数が1年で20%増加しました。

ロイヤルホストの事例

外食チェーンのロイヤルホスト。コロナ禍で外出や外食が自粛されたため、2020年の売上高は前年の626億円から463億円へ減少。

背景コロナ禍で外食自体が自粛
戦略来店した時に楽しんでもらえるようにフェアを実施
テイクアウトメニューの充実
結果2023年にはコロナ前の売上高まで回復

この状況を打開するためにテイクアウトメニューの充実とフェアなどのイベントを充実させ、「外食=特別な食事」をより強く訴求することで、2023年にはコロナ前の売上高に迫る勢いで回復させ、店舗売上の落ち込みを最小限に抑え、新しい顧客層の開拓にも成功しました。

営業戦略を策定する前準備

ただ漠然と営業戦略の策定をしても目標達成はできません。目標を達成するために必要な準備のご説明をいたします。

  • 市場調査
  • 営業現状の数値化
  • 営業現状の分析
  • 営業課題の把握・明確化
  • コアコンピタンスの把握

市場調査

自社の市場についてのデータを体系的に収集し、競合他社の動向、市場規模、成長率、顧客ニーズなどを綿密に調査します。これにより、市場における自社の位置づけや差別化のポイントを明確化させることができます。

市場調査を行う手順

  • 目的設定:調査する目的を明確にし、何を知りたいのかを定義します。

例:競合他社の動向、ターゲットになる顧客層の求めるニーズ、新商品の市場需要

  • 調査方法の選定:定量調査と定性調査のどちらで調査するのかを決めます。

・定量調査:アンケートや統計データなどの数値で表せるデータを分析

・定性調査:インタビューやフォーカスグループで得た数値にできないデータを分析

  • データ収集:アンケートやインタビュー、などを通じて直接収集するデータや、既存のレポート、業界の統計データ、オンライン情報など既に存在するデータを収集する
  • データ分析:収集したデータを、統計ソフトやデータ分析ツールを使用して整理・分析し、トレンドやパターンを特定します。

営業現状の数値化

営業の現状を把握する時、まず確認するのは、売上などの具体的な数字です。

現在の売上、顧客数、成約率、顧客単価などを数値化することで、自社の問題点やより成長させるべき点を見つけることができます。

営業現状の分析

数値化したデータを基に、現状の強みと弱みを分析します。現在成功している施策と改善が必要な領域を特定し、今後の戦略立案や修正を行います。

SWOT分析や3C分析といったフレームワークを活用することで、スムーズな分析を行うことができます。先にご紹介したフレームワークについては後程詳しく解説します。

  1. 3C分析:Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から市場環境を分析するフレームワーク
  2. SWOT分析:内部と外部の環境をStrengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)を使って評価するためのフレームワーク
  3. 4P分析:Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の4要素から、販売戦略を決めるためのフレームワーク
  4. 4C分析:Customer Value(顧客価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の顧客の目線に立って行うフレームワークです
  5. ファイブフォース分析:「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「競争業者間の敵対関係」から分析するフレームワーク

営業課題の把握・明確化

現状分析の結果を元に、具体的な課題を抽出します。

課題を明確にすることで営業活動の効果を最大化し、目標達成に向けた適切なアクションを取ることができます。

自社の強みや弱み、他社との差別化できる点を客観的に把握することで、戦略を実行するための具体的な計画を立てることができます。限られたリソースの中で最大の効果を得るために、重要度と緊急度を考慮して課題に取り組むことがポイントとなります。

コア・コンピタンスの把握

コア・コンピタンスとは、G・ハメルとC・K・プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められた概念で、「他社に真似できない核となる能力」のことです。

他社には真似できない独自の強みや能力を特定することが、競争優位性を持続的に保ち、市場で成功するための鍵となります。

株式会社タイミー:「スキマバイト」という概念を確立

クラウドワークス:「お小遣い稼ぎ感覚」から「副業や本業並みに稼げる」というイメージへ

Goタクシー:タクシーは路上や電話で手配から「アプリで配車」という概念を確立

営業戦略で活かせるフレームワーク5選

「営業戦略を策定する前準備」の「営業現状の分析」でもお話をしました、営業現状の分析で活かせるフレームワークについてご紹介いたします。

  1. 3C分析
  2. SWOT分析
  3. 4P分析
  4. 4C分析
  5. ファイブフォース分析

3C分析

Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から市場環境を分析するフレームワークです。

マーケティング戦略や経営戦略の構築時によく用いられるフレームワークで、営業戦略にも十分活用可能。

Customer(顧客)・ターゲットのニーズ、嗜好、行動、購買プロセスなど
・市場トレンドを把握し、どのような価値提供が最適なのか
Competitor(競合)・競合他社の製品品質や価格
・マーケティング戦術
・市場シェア
Company(自社)・自社の技術力や製品ライン
・販売チャネル
・組織の強みや財務状況の確認

例:人材紹介業界

顧客:人材確保に時間と採用費用がかかる。適切な人材が集まらない。必要なタイミングで人材確保ができない。

競合:A社は金額は年収の30%、B社は定額で1名採用で70万円、C社は月額制で30万円

自社:求職者数が業界の中でも多く、自社内で求職者の育成環境も用意ができる

自社でできそうなこと

  • 顧客の採用費用を抑えたいというニーズのために、月額制と成果報酬を一緒に取り入れて、1回の採用でかかる費用を抑える。
  • 入職後一定期間で退職してしまった場合は、一部返金制度を設けることで人材提供の信用度を上げる
  • 求職者へは、入職までのフォローや入職後フォローも行うことで人材の定着率を上げる

SWOT分析

Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)を整理し、戦略立案に活用します。自社で改善のできる内部環境と自社では改善が難しい外部環境の両面から自社の状況を分析できます。

前述の3C分析と合わせて行われることが多いフレームワークです。

4P分析

Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の4要素からマーケティング戦略を検討します。どんな製品をいくらで、どこで、どのように売っていくかを決めるためのフレームワークです。

例 ウォーターサーバー

製品(Product):富士山の天然水、ペットボトルタイプのボトル 価格(Price):1本12ℓ2,500円 流通(Place):公式オンラインストア プロモーション(Promotion):家電量販店や百貨店などでのブース営業、訪問販売、テレビCM、オンラインバナー広告、SNSキャンペーン

4C分析

Customer Value(顧客価値)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の顧客の目線に立って行うフレームワークです。

例 ウォーターサーバー Customer Value(顧客価値):美味しい水が飲みたい、重いから配達してもらえると便利

Cost(コスト):水の料金、配送料

Convenience(便利さ):公式オンラインストア、主要家電量販店での購入、豊富な支払い方法 Communication(コミュニケーション):テレビCM、ソーシャルメディア広告、カスタマーセンターの対応の速さ

ファイブフォース分析

マイケル・ポーターによって提唱された競合状況を分析するフレームワークです。業界の競争状況を、「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「競争業者間の敵対関係」から分析を行います。

自社を取り巻く脅威を掘り下げ、どのように収益を確保できるかを分析し、成果に繋がる営業戦略を作成することが可能です。

営業戦略の手順4ステップ

では具体的に営業戦略を立案していきましょう。

  • 中長期的な目標の設定
  • ペルソナの設定
  • カスタマージャーニーの策定
  • KPIの設定

中長期的な目標の設定

まず最初は営業目標を明確に設定しましょう。目標は短期目標ではなく、中長期的な目標を設定しましょう。

目標を設定する時に大事になるのは、

  • 測定可能な目標:具体的な数字で決めることができる目標
  • 現実的な目標:現状の実績や市場を考慮した現実的な目標
  • 組織全体と連携した目標:会社内の別部署の目標と一致した目標

この3つが重要となります。

悪い例

  • シェア率を増やす
  • 売上を1年以内に前年の100倍にする

良い例

  • 3年で関東圏での出店数を50店舗増やす
  • 1年で100件の契約を目指す。

ペルソナの設定

ペルソナとは、ターゲット顧客の典型的なプロフィールを具体的に描写した架空の人物のことです。

戦略を立てる時、ペルソナを作成することで、実際の顧客に対する理解が深まり、顧客中心のアプローチを取りやすくなります。

ペルソナを作成するときは、

  • 客観性と信頼性のあるデータを基に作成する
  • 定期的にペルソナの設定を行う
  • 既存顧客のペルソナだけでなく、新規顧客のペルソナも作成する

以下にペルソナシートを共有していますので、ご活用ください。

https://docs.google.com/document/d/1gC84GZnSrCjTKdrONGfZ8PiwftyP638LX-IgJe9PRUQ/edit#heading=h.gxzgwc40ejpg

カスタマージャーニーの策定

カスタマージャーニーとは、顧客が商品サービスの「認知」をし、「興味を持って購入検討」をし「購入」、「利用」、「アフターサービス」「リピート」するまでの一連のプロセスや体験のことを指します。

カスタマージャーニーを策定することで、顧客がどう製品やサービスを知り、購入を決定し、利用し、さらにアフターサービスを受け、リピートするまでの全体の流れを可視化することができます。

カスタマージャーニーは、次のステップに従って策定しましょう。

  • 具体的な顧客ペルソナの作成
  • 顧客自身の目標と行動を明確化
  • 各ステージにおいて、顧客がどのようなアクションをするのかを特定する
  • 各ステージで顧客が感じる感情や直面する課題を特定する
  • 顧客満足度を上げるためのアクションプランを策定する

このステップをもとに取るべき営業の手段を決めていきましょう。

電話営業が効果的という結論になった場合は、内部リンク002-newcustomer-tel

メールが効果的だという結論になった場合は、内部リンク001-newcustomer-mail

で詳しくご説明しておりますので、ぜひご覧ください。

KPIの設定

最後に目標達成度を測定するための指標であるKPI(重要達成度指標)を設定しましょう。

KPIは売上や顧客数などの数値だけでなく、顧客満足度、リピート率、商談成約率など、多角的な指標を設定することで、目標がどのくらい達成されているのかを明確にすることができます。

KPI設定の具体例

  • アポイント月50件
  • 過去購入者へ月1000件メール
  • 売上前月比120%

まとめ

いかがでしたでしょうか。

効果的な営業戦略の立案は、企業の成長と競争力維持に不可欠です。

今回紹介しました5つのステップとフレームワークを活用し、戦略的なアプローチを行い、営業成果の向上に繋げましょう。

戦略を立てた時に、営業部門に弱さを感じられた時は、新規営業や既存サービスのベースアップの経験が豊富な弊社へご相談をお待ちしております。

弊社関連サービス
法人営業代行
営業ターゲットのリストアップから、テレアポ、訪問営業、クロージングに至るまで、新規開拓営業の全てのプロセスを営業代行するサービスです。